潮風通信

〜尾道の潮風にのせてお届けします〜

第4話

光明寺民話

 今でも皆様の厄難のお守りとして人々の信仰を集めています浪分観音様の縁起と当山の聖観音様にまつわる民話をご紹介しましょう。

浪分観世音菩薩

【浪分観世音菩薩略縁起】

備後御調郡玉之浦御所 清浄山光明寺

大悲殿に安置し奉る千手千眼観世音菩薩は行基菩薩 難波の浦において水路乗船の易(やす)からんことを祈念し給い御彫刻ありしとて世に言い伝えて浪分け観世音と称し奉る その霊験を挙ぐるに昔応仁の頃天下不平にして諸国怱劇止む年なし 就中四国中国海上陸地闘争数度に及びたる 然るに宮地の一党予州を頽敗し海上に浮出 比の尊容を船中に守り奉り兼て定業必死と思い祈誓をなしけるに数月風波に漂い闘競危難をしのぎ当国因島に着船す 誠に数遍 危き難を遁れしこと 大士の波浪不能没の御誓と信仰ますます深かりける 明光の弟当所島居資長は譲をうけて厚信のあまり当山にうつし奉りて幾百余年の今にいたりて当寺の霊宝となりぬ 然れば渡海往来の輩 船中風波の難を救はせ又世の人 諺に不慮の災難を波風立といえば、家にありて信ずる輩は横病横死の災難をすくい給う 当来には個々心蓮開敷の御誓い 是行基菩薩意願の作にして霊験炳然しければ世こぞりて浪分の観世音と仰ぎ奉るものなり。

(※:江戸時代のものと思われる寺伝来の版木から転載)

 当山の浪分観世音菩薩は、平成28年4月に日本遺産「よみがえる村上海賊の記憶」の構成文化財のひとつに認定されました。

聖観音

【聖観音の民話】

 昔むかし、ひとりの泥棒が光明寺の聖観音様を盗みに来ました。本堂から観音様を山門の石段のところまで運び、一休みしました。もう一度持ち上げようとしたら、観音様は根が生えたように全く動かなくなったのです。仕方がないので、そのままにして家に帰りました。

そして、次の日のまた寺に行くと観音様は本堂にちゃんといらっしゃる。夜になって泥棒は再び観音様を盗み、山門の石段のところで一休み。もう一度持ち上げようとしたら全く動かないので、あきらめてそのままにして帰りました。今度は、この話を聞いた力自慢の泥棒が盗みに入りました。ところが、山門の石段のところに来ると、観音様がだんだん重くなってきて、とうとうあまりの重さに持ちきれなくなりました。ついには、観音様を置いて帰ったそうです。

それ以来この立派な聖観音は、お寺から何度も持ち出されそうになりましたが山門より外に持ち出されることはなかったというお話です。