当山の墓地には、備後(びんご)国の刀鍛冶を代表する三原正家(みはら・まさいえ)を祖と伝える其阿弥(ごあみ)家のお墓があります。
享保4(1719)年の「其阿弥清兵衛覚書(ごあみ・せいべえ・おぼえがき)」によれば、時宗の二祖真教上人が尾道を訪れた際に「御札切小刀」を献上したところ、「称美(褒美)」として「其阿弥」という号を賜ったとしています。
其阿弥家は、市内の十四日元町(とよひもとまち)辺りにあって、江戸時代に入ると農耕や海運のための用具も製作するようになったそうです。往時には、周辺に何軒もの鍛冶屋が軒を連ね、「鍛冶屋町」と呼ばれました。
其阿弥家の名品としては、国の重要文化財に指定されている「毛抜形太刀(けぬきがたのたち/福山市新市町の吉備津神社所蔵)」や尾道市重要文化財に指定されている刀(個人蔵)などがあります。いずれも室町時代に活躍した其阿弥長行(ごあみ・ながゆき)の作です。